ある物語

もうボクが動けなくなってから、どれくらいなんだろうね。

あれ、みんなぼくのまわりにいる…なんでだろう。



ちょっと前は、歩いてご飯も少しだけど食べたけど。

ボクが元気なくて、お母さん、お父さん、お姉ちゃん、おにいちゃんが

「びょういん」って、嫌なことばかりするとこに連れていった。

力いっぱい嫌がっても、だめなんだ！　

でも、痛いことされたり、苦いおやつみたいのを飲むと、からだが元気になっていくし、

がんばると、「せんせい」って呼ばれる人や、やさしいおねえさんにおいしいオヤツもらえたりするんだ。
おねえさんの抱っこもきらいじゃないしね。

いつもは、これで元気になるのに…。

今回は、なんかいっぱいされたよ。　血をとられたり、くらいへやで写真とったり。

「せんせい」ってひとが、お母さんたちになんか話してる。

言葉分からないから外みてたけど、お母さんたちが悲しい顔になっている…

「長生きしてます。徐々に老いていきます。もちろん、内臓もそれに伴い病気になることもあります。」

なんかお話して、みんなを悲しませてる！

やっぱりあいつは悪いやつなんだ！ボクの家族をいじめているんだ！
やっつけてやろうか！

あっ、お家に帰るって！にがいオヤツもらってた、いやだなぁ…。

しばらく、おいしくないおやつをお家で食べていたけど、なんかもうご飯も食べられないんだ…。
あんまり、立ったり歩いたりも出来なくなってきたよ。

また、あの嫌なところにいくの？
でも、もうやっつける元気ないんだ…

…きちゃった。

こんどは、チクッってなんかお水みたいの打たれたよ。

あれ、ちょっと元気になった。お腹もすこーしだけ空いたかなぁ。

もしかして、いいひと？

それから、毎日のようにチクチクされた。

お父さん、お母さんが「せんせい」のことを一生懸命まねしてる！

なんでかなぁ。

あっ、今日はおうちでお母さんが「せんせい」まねしてる、よかった～。

痛くないよ。
時々「せんせい」が来る、やっつけてやる～！

ぼくね、あんまり動けなくなったから、ずっとおうちがいいなぁ。

あれ、毎日チクチクしているのに動けなくなってきた。

ぼく、横になっていい？なんかあったら立つから…。

「せんせい」がきた。
またみんなを泣かせてる。
でも、「せんせい」もかなしそうだ…。

なんでだろう。

それから、ぼくはイッパイ寝ることが多くなったよ。

あんまり　からだが動かなくなっちゃた。

でも、みんなが　からだ拭いてくれたり
みんなが見えるようにしてくれたり

その度に尻尾ふったり顔上げたりした。
みんな笑ってくれた。

ボクもいっぱい触ってもらってうれしい！

もう尻尾をちょっと動かしたり、顔を少し動かすことくらいしか出来ないけど
嬉しいときや、みんなの顔を見たいとき動かしているんだ…

最近、それもちょっと上手に出来ないんだ。

もう、動けないみたい…。

ねぇ、なんだかちょっとみんなの顔が見えにくくなったりするんだ…
なんでだろう、すこし息するのがゆっくりになったり、はやくなったりするんだ。


あれ、みんなぼくのまわりにいる…なんでだろう。
おでかけかな？　でも、動けないんだ、お留守番しているよ。

みんなぼくの名前呼んで泣いている。

ごめんね、みんなの涙ふけないんだ…　近くにいて寄り添うこと出来ないんだ。

みんなが見えなくなってきてるんだ。すこし、眠っていいかなぁ。

みんなの家族でよかったよ。いっぱい怒られたけど、楽しかったよ。

今度会うときも、みんなが一緒だよね。

おやすみなさい。